iPhoneアプリ「INTEMPO」はなぜ、構想からリリースまで丸1年かかったのか。 | hajipion.com

仕事関係なしにプライベートでチーム開発することは、世の中によくある。

たとえば企画職が「これはイケル」と思ったアイデアを同期のエンジニアに話を持ちかけて一緒につくることになったり、ハッカソンで何かしらをつくったチームで「このアプリ、リリースしちゃおうぜ!」という流れになったり……このうち9.8割はリリースまでに至らない。

その理由は色々あって、特に締め切りがないからみんなダレたり、言い出しっぺが途中で飽きたり、誰かが作業をしてくれないでペンディングのまま自然消滅したり……ちなみに僕は全て経験済み。

さて、僕は先日こんなアプリをリリースした。

INTEMPO -「リズムに乗って歩くだけ」で乗りたい電車に間に合うアプリ

INTEMPO

去年のMashup Awards 10で優秀賞をとったこのアプリだけは、受賞の嬉しさや世の中の反響(ヤフーニュースやはちま起稿に乗ったりした)もあって、先述のように「結局リリースされないで終わった」は避けたいと思い、授賞式が終わったあとも開発を続けた。

しかし、このアイデアを思いついたのがちょうど1年前の10月なので、構想からリリースまで丸1年かかったことになる。
プライベートでのチーム開発だとしても、ひとつのアプリと考えれば、かなり長い。

何があったのかをここに記す。

1. プロトタイプ作り

去年の10月にINTEMPOのアイデアを思いつき、Mashup Awards(以下MA)用にアプリを作成した。

このときにできたのがプロトタイプ。(プロトタイプといってもプロダクトとしては完成していて、どちらかというと「原型」という意味のプロトタイプ)

UIもかなりシンプルで、大まかに「ホーム画面」「経路選択画面」「音楽再生画面」の3つ。

旧INTEMPO

MAで「優秀賞」「New Music Experience賞」「駅すぱあと賞」の3つを受賞後、すぐリリースできるつもりだったが、駅すぱあとのAPIは「MAイベント時のみ無償扱い」とのことで、公式に使うとなるととても個人では払えるレベルではなかったので、そのままのリリースは不可能となった。

ここで第一のピボットが起きる。

2. 第一のピボット – 乗換機能の排除

乗換案内の無償APIは他にもなかったため、仕方なく乗換案内機能を消すことにした。

UIも全て変えた。

具体的にいうと、乗換案内の画面でユーザーに「向かう駅名」と「その駅に着きたい時間」を入力させるというもの。

乗換案内がアプリ内で使えないため、ユーザーは「乗換案内アプリで乗りたい電車の出発時刻を検索したあと、INTEMPOでその時間を入力する」というものだった。今思えば、なんだそのクソアプリは。

2月に出すつもりだったが、エンジニアのぴかしが論文の発表とかで海外出張いったりしてて(誇り高い)忙しかったので、春まで持ち越した。

彼は帰国してから何かを悟ったように僕にこう言った。

「今のままのINTEMPOじゃ、出す意味がない」

3. 第二のピボット – 原点回帰のUX

衝撃が走った。

「今のままのINTEMPOじゃ、出す意味がない」

僕が薄々思っていたことでもあった。
リリースしたいという執念だけで、機能も削り、UXを犠牲にし、つくってきた。

でもそれは果たしてリリースするだけの価値があるのだろうか?
手段と目的がごっちゃになってないか?
プロダクトを世に出すことの意味を問われた気がした。

ただ、そうはいっても乗換案内の機能がないことにはこのアプリは始まらないよな……と思っていたら、「リクエストを飛ばすかたちをうまくやれば、APIがなくてもできそうだから検証したい」とのこと。

それができれば願ってもないどころか、一番良い選択!
ぴかしは海外で何かを掴んできたようだ。さすがグローバルな男は違うぜ。

本当にそれができるのか彼が検証している間に、僕はUIを刷新した。というより元に戻した。

加えて、このアプリにおけるひとつのユーザー体験を軸に、ウォークスルーやらなんやらを付け足し、UIの再構築をおこなった。

あとはデザイナーのほそみにビジュアルを整えてもらい、検証の結果できそうだと判断したぴかしに開発をまかせたら、1ヶ月で完成した。
コードも全てSwiftで書き直してた。とんでもない速さ。

もう1ヶ月で細かいインタラクションやらのクオリティを上げた。

4. リジェクト祭り – Appleによる冷酷無情な鉄槌

ASOの知見を活かしながら、iTunes Connectで遂に申請をおこなった。

が、何回もリジェクトをくらった。

reject

権利関係の他、ありがたいバグ報告もあったが、4回目くらいに「これ日本でしか使えないよね。本当に動いてるかわかんないから動画とかくれ」という理由でリジェクトくらったときは苛ついた。最初に言ってくれ!

Appleは審査が遅い(申請毎に1〜2週間かかる)上にリジェクト理由をひとつずつしか言ってこないからタチが悪いが、信者になってしまった以上これは致し方無いことなのである。

結果的に6回連続でリジェクトをくらった。

LINEスタンプのとき もそうだったが、何かとリジェクトされがちな人生だと思う。(大泣き)

5. リリース

そして7回目の申請でようやく通り、1週間後リリースした。

INTEMPO – 「リズムに乗って歩くだけ」で乗りたい電車に間に合う 無料音楽プレーヤー

ただ、今週末のプレゼン(Mashup Awards 11)のため、アプリのブラッシュアップ作業で忙しく、まだチームで打ち上げができてない。

ちなみに今年はMAに2作品だしていて、どちらも準決勝までいった。
ひとつは、Music Hack Dayでトリプル受賞を果たした「CliMix

climix

もうひとつは、電話アプリ「Attention

attention

後者はもうテーマ賞受賞が確定している。

願わくば去年と同じく、また決勝でプレゼンしたい。

そして決勝戦後にまとめて打ち上げする予定。

6. 最後に

INTEMPO、いいアプリなので、ぜひ使ってください。

INTEMPO -「リズムに乗って歩くだけ」で乗りたい電車に間に合うアプリ

INTEMPO

Hajime Hirono

Written by

広野 萌(ひろの はじめ)

@hajipion
ブログは note にお引越ししました

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